大判例

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札幌高等裁判所 昭和43年(ネ)220号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二、そこで、右偽造が訴外久保田において被控訴人の事業の執行についてされたものか否かにつき検討する。被控訴会社がガソリン、重油等の販売を営む会社であることは、当事者間に争いがなく、<証拠>を総合すると、被控訴会社は、岩内町では同業者中売上げの多い部類に属するとはいうものの、営業所としては本社事務所から約七〇〇メートル離れた個所に存在する万代の給油所と埠頭に存在する船舶用重油給油所の二個所にすぎず、これらの従業員は万代の給油所で所長以下約六名、重油給油所で僅か二名に止まり、本社事務所の方も代表者社長を除くと取締役の池田辰雄以下五、六名にすぎなかつたし、それも池田の下に訴外久保田がおり、他は運転手や女子事務員にすぎないという構成であつた。しかも代表者社長の西尾栄一は常には事務所に出社せず、同人用の机も備え付けていないありさまであつたから、いきおい右池田において社務の多くを取り仕切つていた。訴外久保田の職務は、主として集金にあつたが、従業員の少ない小規模の会社であることや池田のすぐ下の地位にあること等の事情から、広範囲にわたる仕事に携わらねばならず、殊に、昭和四〇年ごろを頂点とする漁業不振の時期には、売掛金の回収が思うにまかせず、いきおい資金操作に苦しんだので、西尾や池田の指示のもと、ときには多少の裁量をも加えつつ、売掛金の回収、銀行、金融業者等からの金員の借入れに奔走していた。そしてこのような職務を遂行するに際しては、売掛金の回収先から支払いのための約束手形を差し入れてもらう場合にそなえて、常時カバンの中に約束手形用紙を入れてこれを携行していたり、会社において正規に作成した約束手形を持参して借入先に交付したり、ときには西尾ないし池田の命を受けて約束手形を作成した。会社の記名ゴム印や代表者印は執務時間中池田の机の中に保管されていたが、訴外久保田は必要に応じこれを取り出して使用することを許されていたし、会社の手形用紙は同訴外人の机のすぐ横のロッカーに入れてあり、執務時間中はいつでも取り出せる状態にあつたという事実が認められる。右認定の事実によれば、手形の作成事務そのものは本来訴外久保田の業務とはいえないというべきではあるけれども、ときにはこれに従事することがあつたばかりか、手形の使送にも従事していたし、同訴外人が無断で手形を作成することが容易な状態にもあつたのであるから、同訴外人の本件約束手形の偽造行為は、行為の外観上も、職務内容の関連性からみても、被控訴会社の事務の執行についてされたものと認定するのが相当である。

(原田一隆 神田鉱三 阻野悌介)

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